オリジナルキーワード集

  

Timid Investment

    

  海外直接投資に際して100%出資を選択せず、持分割合を下げて現地資本家の主体的な経営行動に期待する。米国企業はグループ企業への出資比率を100%とすることが多いが、日本企業は必ずしもそうしてこなかった。海外投資においても少なくとも出資比率については同様に低い場合が多い。ただし経営原理は国内グループ会社と海外とでは異なる。〈詳細


アウター・サポーター(outer supporter)、インナー・サポーター(inner supporter)

    

  サポーターはプロサッカーのチーム(クラブ)の熱心なファンを指す。bjリーグのバスケットボールならブースターである。このサポーターのうち、ホームタウンに居住するサポーターとホームタウン外に居住するサポーターを区別して把握するのがアウター・サポーター、インナー・サポーターの概念である。アウター・サポーターのうち隣接市の住民はneighbor city supporter と呼んでみたい。
  たとえば、サガン鳥栖(佐賀県)のサポーターで福岡県久留米市在住の人はアウター・サポーター(neighbor city supporter)である。アウター・サポーターにとって、応援するチームは「地元のチーム」ではないし当然そういう意識もない。したがって、顧客満足やチーム・アイデンティティなどについて、インナー・サポーターとは異なる点が多いものと思われる。(2012/05/31)(なおこの概念のうちアウター・サポーター、インナー・サポーターのネーミングは早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の学生である山下 玲氏と共同で行なった)


営利性の逆説

    

  株式会社は、余剰を外部(株主)に分配するので(しようとするなら)営利組織である。これに対して、非営利法人(社団、財団、NPO法人)は分配できないので非営利である。
  したがって、非営利法人は生み出した余剰を内部に留保できる(たとえば正味財産の増加)。営利法人は分配すればその分内部留保可能額が小さくなる。どちらが余剰を生みだし、内部留保を増すことのインセンティブを高められるかというと、非営利法人であるという逆説的な結論になる。営利法人は余剰を生みだしても外部に分配しなければならないと考えるなら余剰を生むことのインセンティブが小さくなる。だから取締役や幹部に経済的なインセンティブを付与して 、余剰をより多く生み出そうとする。(2014/02/26)


(スポーツ・スポンサーシップの)拡張性

    

  スポーツのスポンサーは、ユニフォームなどに社名、商品名などを掲示する。この場合、ユニフォームはメディアであり、スポンサーはこのメディアに対価を支払い、社名や商品名が露出されることによる効果を期待する。
  これに対して、スポンサーが自社のホームページ、あるいは新聞の紙面広告として「わが社は△△クラブを応援しています」と掲示するのは、スポーツのクラブにはスポンサー収入をもたらさないが、スポンサー企業にとってはメリットが大きい。クラブが提供するメディアには量的な限界があるが、スポンサーのこのような活動については、メディアの量的な限界がないので、スポンサーはメディアコストを負担すればスポンサーメリットを「拡張」することができる。
  このような拡張性メリットはスポンサーメリットの一つなので、クラブはこのメリット(=権利)について、スポンサーから対価を得ることを検討すべきである。また、スポンサーがこのようにして拡張性メリットを享受することは、同時にクラブの知名度を掲示によって向上させることにもなるので、クラブは拡張性の高いスポンサーを選ぶべきである。


観戦頻度のスマイルカーブ

    

  Jリーグのリーグ戦を見に来るファンの観戦頻度は、1〜2回という人と、ホームゲーム全試合、あるいはほぼ全試合という人が多い。これをグラフにすると、図のようなスマイルカーブになる。



  1回の試合の観客の観戦頻度分布は、標本バイアスによって、B点が高くなる。これに対して、1シーズンに1回以上観戦したファンを母集団にした場合は、1回の場合に比べて相対的にA点が高く、B点は低くなる。ただし、スマイルカーブであることに変わりはない。
  このように、観戦者は「ほぼ全試合」型と「1〜2回」が多いのだとすると、ファンの年間平均観戦回数やその分散には、少なくとも実務的な意味はなさそうである。観戦者には、大きく2つのセグメントがあるというところから、考えていく必要があると言えるだろう。(2016/03/01)


緩慢な革新

    

  イノベーションの実現のためには、必要な技術や資源がそろわなければならない。このため、イノベーションは「ゆっくりと実現」する。たとえば、ワットが蒸気機関を発明したのは1769年だが、英国で人を乗せる蒸気機関車が営業を開始したのは1825年である。〈詳細〉(2015/08/01)


競技者自治

    

  「もと競技者」が、その競技団体の運営を担うこと。競技者としてのレベルが高かった人が組織運営の中心となることも特徴。大相撲がこの典型。プロ野球は、選手出身者は監督になるが球団経営に関与しない。つまり競技者自治型ではない。男子のサッカーやバレーボール、ラグビーなど、企業スポーツの歴史を持つ競技では、トップレベルの選手が現役を引退した後、所属する企業で職業経験を積み、その後、あるいは並行して競技団体運営に携わるので競技者自治と言うことができる。大相撲のように、組織運営者がその競技に係わる職務経験だけを持つという、いわば純粋な競技者自治は例外的なものである。(2012/07/20改訂)


グランドマザー・ファクトリー

    

  マザーファクトリーは製造業の中心的な工場を指す。その役割としては
・パイロット機能:開発技術の適用/新製品の試作と量産→他の工場への知識移転
・教育機能:海外等のグループ工場からの技術者、技能者の研修教育
・人材供給機能:グループ工場への管理者の送り出し、そのための教育
などがある。またしたがって、マザーファクトリーの生産設備は最新鋭のものか、そうでなくてもグループ工場と同程度に新しいことが必要である。
  日本の製造業大手は現在、生産機能を海外に多く移転している。この結果として、海外設備は最新鋭だが、国内については設備年齢が上昇する傾向にある。この状態では、国内工場はマザーファクトリーの役割を担うことができず、その機能も海外に移転されることになる。こうなった場合、「もとマザーファクトリー」は、グランドマザー・ファクトリーと呼ぶことができるだろう。
  この呼称は、必ずしも肯定的なものではない。しかし一方、人間社会は、他の霊長類には見られない「おばあさん」の存在によって発展してきた。グランドマザー・ファクトリーは、人間の「おばあさん」のように、企業の発展に貢献することができるだろうか。(2015年12月22日)。


広域回遊

    

  ショッピングセンターで買い物をし、それから競技場へ自動車で移動して観戦する(あるいはこの逆の順序)という消費者行動モデル。スポーツ組織は、ショッピングセンターで集客プロモーションを行うことが可能になる。実際、競技場とショッピングセンターはどちらも郊外型立地なので、クルマで30分前後のところにあることが多い。日本の競技場は商業集積地内、あるいはその近隣にないことが多い。この問題を克服する手段の一つ。


コンビニ型ビジネスモデル

    

  企業スポーツは「三位一体」だが、スポーツマネジメントに関するノウハウを競技団体が提供することで、チーム数を増やすことができる。競技団体がコンビニの本部で、チームがフランチャイジーである。


(企業スポーツの)三位一体

    

  オーナー、スポンサー、スポーツチーム運営の三位一体。伝統的な企業スポーツでは、チームを保有する企業はスポンサーとしてチームの 費用を負担し、運営面でもチームを支えてきた。新たにチームを保有したいと思う企業は、オーナーとしてチームを管理し、スポンサーとして運営費を負担することはできるが、 チーム運営についてのノウハウはない。このため、新しいオーナーが生まれにくい。


スポーツMICE、スポーツMICE COMPLEX

    

  MICEはツーリズムの用語で、Meeting, Incentive, Conference (or Convention), Exhibition (or Event) の頭文字をとったものである。それぞれはツーリズムの目的だが、相互に関係があるものとは理解・意識されていない。
  しかしスポーツにおいては、M, I, C, E が単独ではなく、複合化される。競技種目ごとの全国大会を例にとるなら
    Event:       全国大会(競技会)
    Meeting:     その種目の審判委員会、育成委員会など
    Incentive:   次年度開催地スタッフによる視察
    Conference: 開催地自治体による歓迎イベント、あるいは競技団体主催の開催地との懇親イベント
    Exhibition: 用具用品メーカー、スポーツ関連食品・飲料メーカーによる出展、プロモーション
  
  などが全国大会開催にあわせて同時に(複合的に)行われる。
  これは、競技会開催地域・地元競技団体は、競技場と宿泊施設だけを用意すればよいというものではないことを意味している。競技会以外の活動が重要であり、そのための施設設備とサービスを用意できるかどうかが、競技会誘致、あるいは競技会満足度に影響を与えるのである。(2013/04/02)


制度環境

    

  内部環境の項に記したように、企業の経営環境の定義は「適応の対象であること」である。この定義から、企業をめぐる諸制度も環境であるということができる。
  とくに企業活動等のグローバル化に伴い、企業が依拠すべき制度の制定主体が多様化している。国内であれば制度の究極的な根源は国内法であったが、国際的な活動に際しては、他国の制度、条約、国際機関が制定する制度(銀行のBIS規制、ISO、HACCP、IFRSなど)に従うことになる。それだけ、変化を読みにくくなっている。


相互ガバナンス

    

  市長は市を統治し、市民は選挙権を持ち、市長と市政を監視する。企業は労働者を統治し、労働者は企業のステイクホルダーとしてコーポレート・ガバナンスの主体となっている。統治者が監視される仕組みがあるとう点において、ガバナンスは一方向ではなく相互的である。


(登録料の)対価性(reciprocity)

    

  お金を支払う人がその見返りとしてサービス等の便益を受けたり、財を得る場合、それは取引であり対価性がある。競技者は自身の登録料を、自分の出場する競技会の開催や、自分の競技記録の管理・公認などを目的として支払っている。したがって、競技団体が受け取った登録料をこのような目的のために費消するのであれば、登録料には対価性があり使途として適正である。しかし実際には、この登録料収入を代表強化に供する団体もある。登録者は団体の理念に共鳴しているとは限らず、登録しなければ選手として活動できないという理由で登録している場合もあるので、対価性のない使途は適正ではない。民間企業なら売上を何に使っても構わないが、これは企業には競争があるためである。競技団体はいわば独占なので、対価性の範囲を超えて登録料収入を費消することは優越的地位の濫用である。


タイムシェア型就労

    

  一人の人が同時に複数の仕事について働く。たとえば週休2日の会社に勤務していて、週末は別の会社で仕事をするのがこれにあたる。
  とくに新しい就労形態でもない。いわゆる「出稼ぎ」は、一年サイクルのタイムシェア型就労であろう。高度成長期の工場では、農家の男性は早朝に農作業をしてから出勤していた。サイクルは一日である。このような人がいたおかげで、工場は労働力を確保することができた。産業構造の転換期には、このような労働者がいたおかげで、成長産業が労働力を確保することができた。
  ITの世界ならPCがあればどこででも仕事ができるのでこのワークスタイルを選ぶことが容易である。リナックスの開発やウィキペディアの項目執筆は無償なので労働ではないが活動のスタイルとしてはタイムシェアである。
  仮に六千万人の就業者の一割が一週間に一時間だけ別の仕事をすると仮定すると、年間の総労働時間は約三億時間で、これは年間一五〇〇時間働くフルタイム労働者二〇万人分になる。この人たちが土曜日だけ五時間別の仕事をするならフルタイム労働者百万人分である。タイムシェアはあなどれない。(2014/01/02)


地域資産化/地域資源化

    

  ・大学資産の地域資産化
  ・企業スポーツ資産の地域資産化
  ・プロクラブ資産の地域資産化
など。
地域に所在する主体が、その資産を用いて地域のスポーツ振興に貢献している場合、それらの資産は実質的に地域の資産にもなっている。所有権が移転している訳ではない。
資産とは、大学で言えば、
  ・地域でのスポーツによる交流をするスポーツ指導者、運動部員、トレーナー、手伝いの一般学生などの人的資産
  ・施設や用具
などがあるだろう。
企業スポーツやプロスポーツであれば
  ・スクールやイベントに参加する指導者や選手
  ・運営スタッフ
などが想定される。
地域スポーツは、このような地域資産化によって発展が促進される。
(2015/08/30)


頂点のすぐ下の底辺

    

  競技関係者は強化と普及について、三角形、つまりピラミッド型で認識していることが多い。その頂点は日本代表で、代表が強くなるためには、底辺‥すなわち若年層の競技人口が多いことが必要だと考える。しかし実際には、頂点がまずできて(つまり代表が強くなって)これを目標としてそのスポーツをしたいと考える人が増えたり、支援しようという企業が増えることもある。この場合、ピラミッドは上から作られていく。私はこれを「反―重力のピラミッド」と呼んでいる。また、代表が強くなるためには、一番下の底辺ではなく、「頂点のすぐ下の底辺」が充実している必要がある。サッカーではJリーグがこれにあたる。頂点が代表で、頂点のすぐ下の底辺がJリーグである。 →<詳細>(2013/10/12)


低頻度リピーター(low frequency repeater)

    

  リピーターとは一般的には高い頻度で商品やサービスを購入する顧客を指す。例えば、同じシャンプーを買い続ける人、週1回同じレストランに行く人など。スポーツでも、プロ野球のリピーターとは、年間70試合強のホームゲームのうち何回も、あるいは数十回見に行く人をイメージするはずである。
  これに対して、大相撲名古屋場所の千秋楽を毎年見に行く人は年1回のリピーターである。F1も1開催地年1回である。ほとんどのマラソン・駅伝大会も年1回である。これらの競技会にも、熱心なリピーターが存在する。このような、消費頻度の低いリピーターを「低頻度リピーター」として、多頻度のリピーターと区別して考える必要がある。同じリピーターでも、週1回のリピーターと年1回のリピーターでは、主催者が行なうべきマーケティング行動(CRM)が異なるためである。
  念のために言えば、自動車の購入サイクルは1年よりはるかに長いが、メーカーはCRMを行なっている。つまり、低頻度リピーターが存在することについての認識と対応は、すでになされている。(2012/05/31)


内部環境

    

  企業は経営資源を持ち、経営環境にさらされている。環境とは外部にあり、企業はこれに適応し、ときに働きかけるが、環境をコントロールすることはできない。これに対して経営資源とは企業の内部にあり、企業はこれをコントロールするというのが、一般的な理解であった。
  しかし実際には、企業が経営資源と認識していたものが、コントロールできない事態が生じている。たとえば、日本のような長期雇用の慣行がある産業社会では、社員の高齢化はコントロールできない。企業はこれに適応するために、配置転換や再教育を行う。
  すなわち、コントロール可能性からみた場合、経営資源はときに適応すべき環境となる。企業の内部にある環境なので、これを内部環境と呼ぶことができる。
  最近の会計制度改革で減損処理が行われるようになった。これは、事業資産が「環境化」することを前提とした制度だということができる。


ネイバーシティ・サポーター(neighbor city supporter)

    

  ホームタウンに隣接する地域に居住するサポーター。詳しくはアウター・サポーターの項を参照。(2012/05/31)


反―重力のピラミッド

    

  「頂点のすぐ下の底辺」参照


非フルセット型事業組織

    

  事業に必要な機能をフルセットでは持たない組織。会社の内部組織である事業部、あるいは大企業の子会社に典型的に見られる。機能を本社・親会社等に集約することにより、当該機能の遂行水準を高めるとともにコストを削減する。


(観戦者調査の)標本バイアス

    

  Jリーグのように、ホーム&アウェイ方式でリーグ戦を行っている競技の場合、ホームゲームの観戦者には、リーグ戦のすべてないしほとんどを観戦しに来る熱心なファンから、初めて観戦に来る人まで、さまざまな観戦頻度の入場者が含まれている。このような入場者構成のスタジアムで、ランダムサンプリングによってアンケート調査を行う場合、つぎのような問題が生じる。
1)そのゲームの入場者を母集団と考える場合
  サンプリングは適切である。
2)年1回以上リーグ戦を見にくるファンを母集団と考える場合
  全試合(J1のリーグ戦ならホーム17試合)を見に来るファンと、年1回しか来ないファンとを比べると、前者は後者の17倍の確率でサンプリングに「当たって」調査対象になる。換言すれば、このサンプルは、1ゲームだけの入場者のサンプルとしては適切だが、「年1回以上リーグ戦を見にくるファン」を母集団と考える場合には、標本として大きなバイアスがかかっており、不適切である。(2015/12/01)


ボトムアップ型組織統合(Upward Integration)

    

  株式会社が組織を統合する場合、統合の主体は、資本による支配(出資)と人的支配(経営者の派遣)を行う。資金と人の流れは「上から下へ」である。
  これに対してスポーツの組織では様相が異なる。一例として種目別の全国組織を見るなら、株式会社ではないので資本による支配はそもそも見られないが、それだけでなく、全国組織から地方組織あるいはカテゴリー(実業団、大学など)別組織への人の流れもない。むしろ、これら傘下団体の経営者(理事長など)が、全国組織の理事や評議員をつとめることが多い。人の流れは「下から上へ」である。
  株式会社においても、事業部長や子会社の社長(カテゴリーの責任者)が本社の役員に就任することは一般的に見られるが、これらの人々は本 社から任命されている(制度上は本社の株主が任免を決定しているが実態としては株主は候補者を承認するが候補者を選任しない)。これに対して、スポーツの全国組織の役員等をつとめる「カテゴリー代表」は、全国組織によって選任されているわけではない。多くの場合、一種の「充て職」として、カテゴリー代表が全国組織の役員等に就任する。組織統合の原理が、株式会社とスポーツの全国組織とでは180°違うということである。スポーツの組織では、統合は上方へ、ボトムアップ型で行われている。(2014/06/10)


マイクロ・コングロマリット

    

  小さな(マイクロ)複合事業会社(コングロマリット)。スポーツ組織の事業規模は小さいが、その顧客と収入の類型は多い。つまり、コングロマリット的である。ある意味で、規模の経済に反する事業形態となっている。


リスク耐性

    

  企業が大きな損失に対抗するための財務上の余力。期待損失に対して株主資本が十分大きければよい。また複合事業会社の場合、個々の事業の関連が小さければリスクが同時に顕在化する確率が極めて低くなるため株主資本の大きさに比してリスク耐性が大きい。
  近年の米国企業はROEを高めることを目的として自社株買いによって意図的に株主資本を小さくしたが、結果としてリスク耐性も低下していると言えるだろう。


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